記事の内容
・画家クラムスコイについて
・クラムスコイの絵画作品について
この記事を読むメリット
・ロシアの美術についてもくわしくなり、世界が広がる
・ロシア美術独特の作風を体験することができる
画家クラムスコイとは?生涯から絵画作品についてまで徹底解説!
こんにちは。松河潤です。
いきなり質問ですが、
「油絵」とか「画家」というキーワードで思い出すのはどこの国ですか?
やっぱり印象派の時代だとゴッホやモネ、
ルネサンスの時代になるとダヴィンチやボッティチェッリのイメージが強いので、
イタリアやフランス、
少なくともヨーロッパ圏を思い浮かべる人が多いんじゃないでしょうか?
確かに、実力のある画家が多く集まっていたヨーロッパは
「アートの国」という印象があります。
しかし、もちろんヨーロッパだけでアートが盛り上がっていたわけではありません。
他の地域でも、ヨーロッパに負けないぐらい術力のある画家はたくさんいました。
クラムスコイもそのような画家のひとりです。
今回は、ちょっと趣向を変えて、
ロシアの画家、クラムスコイについて解説していきたいと思います!
印象派についての記事はこちら
ルネサンスについての記事はこちら
クラムスコイとは
イワン・クラムスコイ(1837.5.27~1887.3.24)は
ロシアの画家であり美術評論家です。
ロシア南部にあるオストロゴシスクという地域の貧しい小市民階級の出身で、
サンクトペテルブルクの帝国芸術アカデミーで絵の勉強をしました。
しかし、アカデミーでのイタリアの芸術を称える態度に反発し、
反乱を起こした結果、その首謀者としてアカデミーを放校になってしまいます。
早い話が退学ですね。
来歴がいきなりハードです。
クラムスコイが起こしたこの反乱は「14人の反乱」と言われます。
クラムスコイたちは、イタリアの高尚な美術とロシアの実生活があっていないと考えて、
アカデミーの指向に反発したのです。
アカデミーを退学になったクラムスコイは、
一緒に反乱を起こした仲間たちと共に、「美術家組合」を組織し、
ヴァシリエフスキー島にアトリエを用意してそこで絵の制作をしました。
当時は帝政であったロシアの民主化を求める革命家が台頭していた時代だったのですが、
クラムスコイはそのような革命家たちの理想に感化され、
芸術と民族意識の関係や、芸術家が社会に果たすべき義務など、
自分の意見を発表するようになりました。
クラムスコイはロシアの「移動派」という
ロシアの社会生活に目を向け当時の社会を批判した団体の創設メンバーであり、
リーダーでもありました。
ロシア社会、そしてロシア美術への情熱がすごい人だったんですね。
クラムスコイの美術における民主的志向や、美に関する鋭い判断などは、
後世のロシアの美術に大きな影響を与えました。
クラムスコイの作品の特徴について
クラムスコイは、画家の役割について、
「人々の前に鏡を置き、その鏡を見て彼らを不安にさせる使命」
を持つものと考えていました。
当時のロシアは専制政治で、
それによって貧しさにあえぐ民衆が多かったことから、
クラムスコイは芸術を通してロシア国民に注意を促そうとしたのだと思います。
クラムスコイも「移動派」の1人だったのですが、
移動派では現実をそのまま絵に記録する写実主義の画家が多く、
クラムスコイも写実主義の画家の1人でした。
写実主義についてはこちらの記事をどうぞ
そのため、クラムスコイの作品は
ロシアの社会を描いた風俗画や歴史画などが多いです。
また、クラムスコイの作品はロシアの社会生活そのままを描くのではなく、
ロシアの民衆といった対象の内面まで絵を通して表現しようとする傾向があります。
そのためか、特に人物画・肖像画で優れた作品を残し、
どれもシンプルな構図でありながらも深い精神性が伝わってくる作品になっています。
クラムスコイの絵画作品
見知らぬ女
クラムスコイの作品で一番有名といってもいいのが、この「見知らぬ女」(1883)です。
この女性のモデルははっきりしていませんが、
トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」の女主人公から
インスピレーションを受けているという説が有力です。
実際、この絵は何度か小説のカバーにもなりました。
しかし、クラムスコイはこの女性のモデルを一切明かしませんでした。
高慢で高飛車そうな表情や、特徴的な眼を描くだけで、
この女性の素性を一切明かさなかったことが、
より人々の好奇心を掻き立てて注目を集めました。
謎が人を魅了するのは「モナ・リザ」に似たようなところがりますね。
しかし、この絵が発表されたときには批判が殺到しました。
なぜなら、女性の表情や服装から、勝手に女性を娼婦だと解釈する人が多かったからです。
しかしこのような批判を受けてもこの絵は高い評価が下され、
その人気は確かなものになっていきました。
見るものを深く考察させる謎めいた素性や高慢そうな表情、
それでいてきらめくような柔らかさを持っているこの絵は人々を魅了し続けたのです。
クラムスコイの絶妙な色彩感覚が光った傑作と言えるでしょう。
荒野のイエス・キリスト
クラムスコイは現実のロシアの人々だけでなく、
聖書上の人物の内面までも描写しようとしました。
「荒野のイエス・キリスト」(1872)は
聖書上の人物イエス・キリストの内面まで描写しようとしたクラムスコイらしい作品です。
イエス・キリストといえば、
主、ほとんど神に近い存在として描かれることが多いのですが、
この作品ではキリストの行動を神の行いではなく人間の自己犠牲としてとらえました。
ただ等身大の人物としてキリストを評価しようとしたんですね。
そのため、かなり人間らしいキリストの姿が前面に押し出された作品です。
このように、クラムスコイは人物をただ人物として表現することに優れていました。
まとめ
・クラムスコイはロシアの移動派・写実主義の画家
・芸術を通してロシアの民主化を推し進めようとした
・代表作には「見知らぬ女」「荒野のイエス・キリスト」などがある
シンプルながらも人物の内面や感情などをダイレクトに描くのが得意なクラムスコイ。
そのインパクトは、見る人の心を今もつかんで離しません。
ロシア美術は、あまり目にする機会がないと思いますが
見てみるとかなり面白い作品にも出会えたりします。
これを機にロシア美術も見てみると楽しいですよ!
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