記事の内容
・画家アングルについて
・「グランド・オダリスク」などアングルの絵画作品について
この記事を読むメリット
・巨匠アングルの技法を学んで自分の絵画うまくなる
・アングルの作品がもっと楽しめるようになる
画家アングルについて紹介!代表作「グランド・オダリスク」などについても解説!
こんにちは。松河潤です。
いきなりですが、アングルという画家をご存じですか?
世界史の授業なんかでちらっと話を聞いたことがある、
という人もおおいかもしれません。
言わずと知れた巨匠です。
今回はそんなアングルについて、
生涯から絵画作品まで徹底紹介していきます!
アングルとは
アングル(1780.8.29~1867.1.14)とは、
フランスの画家です。
建築や家具の装飾彫刻をする職人気質な父の下に生まれました。
11歳の時、トゥールーズの美術アカデミーに入学し、
1797年には巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドに弟子入りします。
ダヴィッドについてはこちらの記事をどうぞ
その後、当時の若手画家の登竜門であったローマ賞という賞を受賞しました。
このローマ賞というのは受賞した画家にイタリア留学をさせるものだったので、
アングルもローマを訪れました。
このイタリア留学時代に、
「浴女」や「ユピテルとテティス」などを描いて
留学の成果としてフランスのアカデミーに送られました。
その後留学期間は終了しましたがイタリアに留まり、
ラファエロやミケランジェロなど古典の作品を研究し、作品を残していました。
そして、1824年にアングルはダヴィッドの後継者として支持され迎えられます。
この背景には、
当時台頭していたロマン主義に対抗する新古典主義の指導者が必要だった、
という背景もあります。
今ではこのような勢力争いは想像しづらいですが、
美術にも社会情勢の変化はつきものだったのでしょう。
その後レジオンドヌール勲章(フランスの最高勲章)を受けたり、
フランス・アカデミーの院長を務めたりしたアングルは
フランスでは巨匠としての地位を確立しました。
その後はドガやルノワールなどの印象派や
ピカソやセザンヌなどのキュビスムを使用する画家などにも大きな影響を与えています。
かなりの広範囲に影響力を残している重要な画家といえるでしょう。
ドガについてはこちら
印象派についてはこちら
セザンヌについてはこちら
こうしてみると画家としてはかなり華々しい人生を送ってますね。
アングルの作品の特徴は、
きめ細かく、整った色調と洗練された線です。
まあ簡単に言うと
恐ろしいほどトーンや線といった基礎の力がずば抜けて高いんですね。
基礎の力が高いので、
何を描いても調和してしまうし、見ごたえもある作品になってしまうんです。
画家としては理想的な形といえます。
基礎の力が高いということは、
どんな絵を描いても安定してクオリティの高い作品になりやすいのです。
実際、アングルは忙しい時期でも傑作を多く残しました。
アングルの絵画作品
グランド・オダリスク
アングルの代表作といえばやはりこの「グランド・オダリスク」(1814)です。
この作品は、
ナポレオン1世の妹でナポリ王妃のカロリーヌ・ボナパルトの依頼によって描かれたものです。
オダリスクとは、
オスマン帝国のスルタンなどの権力者に仕える女奴隷のことです。
オダリスクは、
ヨーロッパでオリエンタリズムが流行するにつれてよく絵画で描かれるようになりました。
しかし、この作品はかなりの批判を招きました。
なぜかというと、
オダリスクのプロポーションがかなりゆがめられ、
解剖学的にもおかしいからです。
頭は小さく、腕や足はおかしいぐらいに長いのです。
当時の批評家は「脊椎が2・3個多い」と批判し、
アングルのミスを批判しました。
しかし、後になってこのミスは意図的な者だったことが判明しました。
骨盤と腰部の長さに合わせて、5つ(!)多く脊椎を描いていたのです。
なぜアングルがこのように長いプロポーションを描いたのかは謎ですが、
イスラムの権力者に仕える女奴隷という社会構造のゆがみをプロポーションで表現している
という説や、
オダリスクの複雑な視線から、
オダリスク自身の複雑な感情を表しているという説もあります。
裸体の女性を描くだけでここまでの表現ができるアングルには驚きですね…!
ユピテルとテティス
「ユピテルとテティス」(1811)は
アングルがイタリア留学中に描いた作品です。
ギリシア神話が絵のベースとなっており、
女神テティスがユピテルに懇願するという
ホメロスの『イリアス』という叙事詩に出てくる場面を描いています。
この作品は、アングルが1806年に描いた「玉座のナポレオン」と構図がほぼ一緒です。
「玉座のナポレオン」はかなり酷評され、
「ユピテルとテティス」も最初はずいぶんひどい評価でしたが、
後に代表作といわれるまでに評判が回復しました。
写実的でありながら省略できるところはデフォルメしており、
構図のバランスもよく衣服や肌がきめ細かい丁寧な作品です。
こちらもテティスの身体のプロポーションがかなりゆがめられており、
アングルの理想とする体型が描かれていると考えられています。
ルイ13世の誓願
「ルイ13世の誓願」(1820~1824)は
アングルが故郷モントーバンのノートルダム大聖堂のために描いた祭壇画です。
ルイ13世の妻アンヌが24年の結婚生活の末、
ようやくルイ13世との子どもであるルイ14世を出産しました。
ルイ13世は、
聖母マリアに対して後継ぎの子が生まれたならフランス王国をマリアに捧げる
という誓いをしていたので、
聖母マリアに王国を捧げます。
この作品は、ルイ13世がマリアに誓いを立てる場面を描いています。
マリアがいる天上の世界とルイ13世がいる地上の世界が
上下や明暗によって見事に対比されています。
聖母はラファエロの聖母子像から影響を受けたのが明らかです。
こうしてみるとそっくりですね…。
この作品を描くにあたってアングルはルイ13世のモデルとなった男性の素描をしたり、
実際に聖母のポーズをとった自分の姿を弟子に描かせたりしました。
アングルはこの作品を発表した当初は社会的評価は全く期待していなかったのですが、
結果として
ドラクロワの「キオス島の虐殺」に対抗するような傑作と評価されるようになりました。
この作品によってアングルはレジオンドヌール勲章を受け、
画家としての評価を一気に高めました。
イタリア留学時代からアングルはあまり作品を評価されたことがなかったので、
この作品が絶賛された当時のアングルはかなりうれしかったでしょうね。
まとめ
・アングルはフランスの画家でルノワールやピカソなど後世にも影響を与えた巨匠
・代表作には「グランド・オダリスク」や「ユピテルとテティス」などがある
アングルはかなり昔の画家ですが、
ピカソやセザンヌといった比較的最近の画家にも影響を与えています。
アングルの基本に忠実な作風は現代の画家にとっても勉強になるはずです。
是非、アングルの安定した作風を真似してみてくださいね!
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